ちょっと暗い話だけれど

あんまり大っぴらに書く事でもないけれども、
「こんな人もいたんだよね」と残す意味合いも兼ねて。

今日、先日亡くなったSさんの葬儀に参列した。

本当は朝から稽古があったり撮影や編集があったり、
打ち合わせや飲み会があったりだったんだけれどれども
ほとんどをキャンセルしてお昼から参列してきました。

会葬って言った方が正しいのかな??

 

SさんはBARのマスター。
ここ1年くらいでちょこちょこ行くお店でした。

本人は「ウチはBARですから。」と言ってたけど
七輪の焼き物は全品バリうまいし、煮物もバカうまいし、
季節の野菜や魚を使ったオススメメニューも驚きの連続。

お酒に関しても食に関してもいわゆる「オタク」。
本当に食を愛して追求してる人なんだと思ってました。

 

ある時、お通しでおでんっぽい煮物が出てきてさ、
その中になんか弾力のあるちくわぶみたいなのが入ってたんさ。

噛んでみるとふぐみたいな食感で噛むと旨味が広がる感じ。
でも全体の味は白身魚に近くて、見た目は縮れてちくわぶっぽい。

で、聞いてみる訳ですよ。

「マスター、この弾力のあるちくわぶみたいなの、何すか??」

「マンボウです。」

「へー、マンボウ・・・マンボウ!?」

 

ある時は切ってある林檎に赤いソースが掛かってるんすよ。

「マスター、これ何すか??」

「リンゴのキムチです。」

「へー、リンゴの・・・・キムチ!?」

 

そんな驚きの連続がありながらも全部うまいんだ、本当に。
本当に全部、何を食べてもうまいんだ。笑っちゃう位に。

 

焼き物をお願いするとさ、七輪に炭を入れて、
カウンター席に持って来てくれるんだけれどさ、
ぶっちゃけ七輪が近すぎて熱いのよ。

だからさ、七輪をちょっと奥に避けようとするじゃん、
そうすると「この場所がベストなので動かさないでください。」って怒られるの。

お肉を焼いててさ、話に夢中になっててちょっと焦がしちゃうと、
「もう、もういい加減ひっくり返してください、
ああ、勿体ない・・焦げちゃったじゃないですか・・・。」って怒られるの。

「お客さん、僕がさっき焼き方わかりますかって聞いた時に
わかりますって言ったから僕は黙ってましたけれどわかってないじゃないですか。
わかりませんって言ってくれれば僕が教えて美味しく食べれるんですから
わからないならわからないって言って下さい。」って怒られるの。

「焼き方を覚えればどこの焼き肉屋さんに行っても
お客さんは美味しい食べ方を知ってるから美味しくお肉を食べられるので
ちゃんとウチで焼き方を覚えていってください。」って優しいの。

 

色々お酒飲んで次は何にしようかなーって時にさ、
「マスター、何か日本酒の辛口で良いのありますか??」って聞いたら。

「お客さん、日本酒に辛口ってのはないんですよ。
唐辛子とか七味のピリリとした辛いってのと意味が全く違うので
味が薄くて水みたいな酒が飲みたいのなら駅前のチャラチャラしたお店で飲む方が
お客さんにとっていいかも知れません。」っていじめてくるの。

でも俺がすんごい酒飲みで、日本酒も焼酎もウイスキーも一通り知ってて、
それなりにお酒に対する知識や愛情を持っているって知った後だと、

「このお酒の後だったらこういうのどうですか??」
「瀧澤さんならこういうの好きじゃないですかね??」って
俺が全く知らないお酒を勧めてくれて、それがいちいち美味しいの。

 

 

お酒に関してはお客さんに常に最高を提供します、ウチはBARなんで。
そうやってお客さんがここで色んなお酒を覚えて知って知識を深めて、
そうすればどこに行ってもお客さん恥はかきません、本物を知ってるので。

そうやってよく倒置法で喋る人でした。

 

そう考えればさ、全然怒ってないんだよね。
マジで自分が美味しいと思う食べ方で食べて欲しかったり、
お客さんに本物を知って欲しいから厳しい言い方になるだけでさ、
言葉を裏返せば全部が全部、優しい人だったんだよね。

 

雑炊はいつも「混ぜないで食べて下さい。」って出してくれるんさ。

俺らはいつも言葉の通りに混ぜずにお皿によそって
「うめー!!」って言いながら食べてたけれど、
ある時、酔っ払ったお客さんがすぐにぐちゃぐちゃに混ぜたんだって。

そしたらマスターは極めて冷静に
「もう食べないでください。」って下げちゃったんだって。

すんごいよね、飲食店のマスターとして。

 

人によっては「客に食べ方まで強制するような横柄な店だ。」って思うだろうけど、
お客さん一人一人がどんな食べ方をしているかちゃんと見ててくれるんだぜ??

ちょっと窮屈に感じたりドキドキしちゃう時も確かにあるけれども、
マスターは常にお客さんに対して本気だったんだよ。

だってわからない時は「もう少し焼いた方がいいですかね??」」って聞けば
「もう少し表面がフツフツしてきた時の方が美味しいですよ。」って教えてくれるんだもん。

マスターの本気をこっちが受け取る気持ちがあるかどうかの話なんだよね。

 

「ほら、ウチはBARなんで。」ってよく言ってた。

 

でも日本中どこを探してもあんなに美味しい焼き物を出すBARなんかないよ。
あんなに美味しい雑炊を出すBARなんかない。

日本酒も言葉通り100種類くらい常備して、焼酎も200種類くらい常備して、
どこのバーでも見た事すらない珍しい洋酒を沢山常備して。
ラム酒の種類もバカみたいに沢山。

スパゲティやらキーマカレーやらも、やったら美味しいらしくってさ、
パスタとカレーを食べた無かった事をこんなに後悔した事はないよ。

もうね、BARじゃないんだ、ひたすら謎の店なんだ。
もう何の店かわからないくらい、すんごいお店だった。

 

食べた事のないメニューが山ほどあるのに、
もう食べられないと思うと、悲しい。

マスターが亡くなった事も悲しいけれども、
同じくらいあの店が終わってしまった事も悲しい。

まだ聞いてなかった事、教えて欲しかった事、
それらはもう言えない事も悲しい。

 

なにより。

 

あんだけ食やお酒を愛したマスターが
今までマスター自身が体験してきた食やお酒を教えてくれてた。

それをもう俺は知る事が出来ない事が、
一番悔しくて淋しくて、悲しい。

 

Sさん、どうか安らかにお眠り下さいませ。
またお会い出来る時がありましたら、
僕は遠慮無く「なんか良い感じのお酒教えて下さい!!」って
チャラチャラと話しかけようと思います。

ありがとうございました。

また必ず会いたいです。



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2 comments to this article

  1. やま

    on 2017年8月20日 at 6:42 AM - 返信

    読ませて頂きながら在りし日のマスターを思い出しました。

    僕が連れて行った人達は「もういい」でしたが僕は好きでした。
    なんで好きで居られるのかな?と考えてましたがこのブログを読んで少しだけ理由が分かった気がしました。

    カレーもスパゲティも食べましてが雑炊は食べてません、、、、残念ながら。

  2. 菜樹 なつき

    on 2017年8月20日 at 8:01 AM - 返信

    素敵なお店だったんですね。
    雑炊。そういや、まぜないほうがいいですね。飯粒や組織、こわさないほうが。(目でも食べますし。あらほぐしが好きかな)

    もう会えないのが悲しいですね。。瀧澤さん。本当にいい出会いかたをしたね。
    あとはマスターが迷わず行くべき所へ行けたら。。欲を言えば、ちょっと迷ってほしいかな。。 ご冥福お祈りします。

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